キレイラインは医療費控除できる?いくら戻る?そんな歯列矯正の疑問を解決
- 歯科医師
- 土黒さくら医師
(赤坂さくら歯科クリニック)
鹿児島大学の歯学部を卒業した後、大型医療法人グループの歯科医院の分院長に就任しました。その後、そのほかの歯科クリニックで経験を積んだ上で、赤坂さくら歯科クリニックを開設しました。私はインビザライン認定医として、インビザラインやキレイラインの治療を日々実施しており、多くの患者様から満足の声をいただいています。
歯列矯正の治療費は、他の医療費と合わせて医療費控除を受けることができるケースがあります。
「キレイライン矯正は医療費控除の対象になる?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、キレイライン矯正など歯列矯正が医療費控除となるのか、医療費控除に含まれるものやいくら戻ってくるかなど計算方法などについて詳しく解説します。
なおインビザラインの医療費控除については「インビザラインは医療費控除できる?申請方法と計算について解説」をご覧ください。
この記事を参考に、制度をうまく活用してくださいね。
目次
キレイラインは医療費控除の対象になるの?
医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えた分から税金が戻ってくる制度です。
キレイライン矯正は歯列矯正の中で比較的リーズナブルとはいっても、10万円以上になるケースがほとんどです。
しかし、キレイラインの全ての治療が医療費控除の対象になるわけではありません。
ここでは、キレイラインが医療費控除の対象になるのか?ということについて解説します。
キレイラインは原則対象外
結論、キレイラインは原則として医療費控除の対象にはなりません。
なぜなら、キレイラインが対応している前歯の部分矯正は、「治療目的」ではなく、「審美目的」となってしまうからです。
医療費控除の対象となるのは歯列矯正が「治療目的」で行われる場合のみで、「審美目的」の場合は対象外となります。
キレイラインで行う歯列矯正は原則として医療費控除の対象としては認められませんが、実際にどのような判断となるかは税務署で確認することをおすすめします。
医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
医療費控除の対象となる条件
歯並びが悪いことが原因で健康に害が及んでおり、矯正治療が必要不可欠なときは医療費控除の対象となります。
具体的には、歯並びの悪さが原因で、噛み合わせや発音などの機能面に問題があるというような場合です。
例えば、噛み合わせが悪いことによって顎関節症や虫歯や歯周病になりやすい状態と歯科医師に判断されたケースは医療費控除の対象となることがあります。
特に歯周病が進行すると、糖尿病、心筋梗塞・狭心症などの心臓病、膵臓がん・腎がん・肺がんなどに罹患する可能性が高くなり、お口の中だけでなく全身の健康を害する恐れがあります。
また、出っ歯やすきっ歯、ガタガタの前歯など、「虫歯や歯周病になりやすい状態」を招く不正咬合を治す目的であれば医療費控除の対象となることがあります。
歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になります。(国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」)
医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間に10万円以上の医療費を払った場合に受けられる所得控除制度です。
医療費控除は、本人の医療費だけでなく、配偶者や親族にかかった医療費も対象となります。
医療費控除を適用するには確定申告を行う必要があります。
医療費控除は年末調整では受けられないため、会社員であっても確定申告が必要です。
医療費控除の対象となる医療費の要件:自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。(国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」)
交通費も医療費控除に認められる
歯列矯正においては、装置代や処置料のほかに以下のものが医療費控除の対象となります。
- 検査費用(レントゲン・CT撮影、口腔内スキャンなど)
- 診断料
- 矯正処置料、調整料
- 医薬品の費用
- 通院の交通費(公共交通機関の場合)
- ローンや分割で支払った矯正治療費
医療費控除の対象となる内容は、医師や歯科医師による治療費だけでなく、検査費用や医薬品、通院のための交通費も含まれます。
また、以下の内容は医療費控除に含まれません。
- ローンや分割支払いの手数料、金利
- 公共交通機関以外の通院の交通費(ガソリン代など)
医療費控除でいくら戻ってくる?
ここでは、医療費控除で戻ってくる金額を計算する3ステップを紹介します。
- 1年間の医療費を合計する
- 医療費控除額を算出する
- 還付金を計算する
①1年間の医療費を合計する
まずは、医療費の対象となるものを再確認し、1年間の医療費の合計を算出します。
医療費の対象となるもの:治療にかかった費用、検査費用、診断料、矯正処置料、調整料、医薬品の費用、通院の交通費、ローンや分割で支払った矯正治療費など
なお、医療費は生計を一にしている家族との合算が可能で、別居していても合算の対象となります。
②医療費控除額を算出する
続いて、①で算出した医療費の合計を用いて医療費控除額を計算します。
医療費控除額は、「医療費の合計」から「保険金などで補てんされる金額」を差し引き、そこから「10万円」を引いた額です。
ただし、総所得額が200万円未満の人は所得の5%を超えた額が控除となりますので、医療費の合計が10万円に届かなくても医療費控除の適用となることがあります。
例えば、1年間の医療費の総額が15万円、保険金などで補てんされる金額が2万円の場合、所得控除額は以下のとおりです。
所得500万円の人のケース:15万円-2万円-10万円=3万円
所得80万円の人のケース:15万円-2万円-80×5%=9万円
所得が200万円の人は総所得額の5%が10万円未満になるため、所得が200万円以上の人に比べて所得控除額が多くなります。
③還付金を計算する
続いて、②で算出した医療費控除額を用いて税金(所得税・住民税)がいくら戻ってくるかを計算します。
例えば、医療費控除額が3万円、所得税が20%、住民税が10%の場合、還付金額は以下のとおりです。
所得税:3万円×20%=6,000円
住民税:3万円×10%=5,000円
上記の例では、所得税と住民税の合計11,000円が還付金として戻ってきます。
医療費控除の手続きの方法
医療費控除を受けるための確定申告の手続きは、以下の手順で行います。
- 医療費控除と還付の金額を計算する
- 確定申告書・医療費控除の明細書を作成する
- 確定申告書・医療費控除の明細書を税務署に提出する
- 還付金を確認する
以下で順番に解説します。
①医療費控除と還付の金額を計算する
領収書を集めて、医療費控除と還付の金額を計算します。
領収書の税務署への提出または提示は不要ですが、5年間保存しなければなりません。
医療費の領収書の添付又は提示は必要ありません。ただし、明細書の記入内容の確認のため、確定申告期限等から5年間、税務署から領収書(医療費通知に係るものを除きます。)の提示又は提出を求める場合がありますので、領収書はご自宅等で保管してください。”(国税庁「医療費控除の明細書」)
②確定申告書・医療費控除の明細書を作成する
税務署や役所、国税庁のホームページから確定申告書と医療費控除の明細書を入手し、必要事項をもれなく記入します。
確定申告書・医療費控除の明細書を税務署に提出する
②で作成した確定申告書・医療費控除の明細書と、マイナンバーの本人確認書類の添付書類台紙を税務署に提出します。
なお、電子申告(e-tax)を使用して確定申告を行うことも可能です。
④還付金を確認する
確定申告が完了してから、おおむね1ヶ月〜1ヶ月半後に還付金を受け取ることができます。
還付金の受け取り方法は、指定口座への振り込みまたはゆうちょ銀行店舗・郵便局での受け取りです。
まとめ
キレイラインで行う部分矯正は、基本的に審美目的となるため医療費控除の対象外となります。
しかし出っ歯やすきっ歯、ガタガタの前歯など、歯並びの悪さが原因で虫歯や歯周病になりやすい状態を招くと歯科医師が判断した場合は、医療費控除の対象となることがあります。
医療費控除には、装置代や処置料のほかにも、検査費用、医薬品の費用、通院の交通費なども対象となります。
医療費控除を利用すると所得税や住民税が還付されますので、ご自身の矯正治療の費用が対象となるかどうかをぜひ確認してみてください。
より詳しくは、赤坂さくら歯科クリニックにてご相談・ご来院をお待ちしております。