インビザラインで抜歯が必要な症例と不要な症例について歯科医が解説
- 歯科医師
- 土黒さくら医師
(赤坂さくら歯科クリニック)
鹿児島大学の歯学部を卒業した後、大型医療法人グループの歯科医院の分院長に就任しました。その後、そのほかの歯科クリニックで経験を積んだ上で、赤坂さくら歯科クリニックを開設しました。私はインビザライン認定医として、インビザラインやキレイラインの治療を日々実施しており、多くの患者様から満足の声をいただいています。
インビザラインとは、透明のマウスピースを口に装着することで、歯並びをきれいにできる治療です。
公式ページによれば1400万人の患者様の使用実績があります。
そして、マウスピース矯正では、インビザラインでは、抜歯は基本的に不要です。しかし、抜歯をした方が良いケースがあります。
この記事では、インビザラインで抜歯をする必要がある場合と不要な場合について解説します。
インスタグラムでも解説しているのでこちらもご覧ください。
ちなみにキレイラインの抜歯については「キレイライン矯正は抜歯なし?抜歯ありのケースや親知らずについても解説!」を参考にしてください。
ぜひ最後まで読んでください。
目次
そもそも抜歯をする目的は?
抜歯をする目的は、歯を動かすスペースをつくるためです。
ばらばらに生えている歯を、適切な位置へ動かすように矯正をすると、きれいな歯並びになります。
しかし、歯を動かすスペースがないと矯正はできません。
抜歯をするとスペースができるため、歯を適切な位置に動かせ、歯並びがきれいになります。
そもそも、抜歯は高い技術が必要です。
インビザライン矯正で抜歯が必要になる4つのケース
そもそもインビザラインにおいて抜歯する必要は基本的にはありません。
しかし、無理に歯を並べて口元が突出してしまう場合は抜歯をおすすめしております。
インビザライン用の抜歯プランもあり、それにより輪郭やEラインが改善可能です
インビザライン矯正をする前に、レントゲンやCT検査などで、患者の歯の状態をチェックします。
歯の生える方向に問題がある
歯の生える方向に問題があると、抜歯が必要になります。
まっすぐに生えていない歯に、マウスピースをつけても密着しないため、矯正の効果を得られないからです。
歯を動かすスペースをつくるために、小臼歯(しょうきゅうし)の抜歯が多いです。
歯をまっすぐに矯正しながら、つくり出したスペースを使い、全体の歯並びをきれいにします。
まっすぐに生えていない歯があると、抜歯をする必要があります。
歯の生える位置に問題がある
歯の生える位置がズレている「八重歯(やえば)」や「乱杭歯(らんぐいば)」があると、抜歯をします。
なぜなら、歯を動かすスペースを確保できないからです。
乱杭歯とはあごが小さいことが原因で、歯が生えるスペースがなく、歯と重なって生えている状態です。
八重歯も、乱杭歯と同じように歯と重なって生えています。
八重歯や乱杭歯を正しい位置に動かすためには、小臼歯を抜歯しスペースを開けて、歯並びがきれいになるように矯正します。
前歯の突出感が強い
突出感のある前歯があると、抜歯をするケースがあります。
インビザライン矯正で歯並びを良くできても、歯が前に出ている状態は改善されないからです。
上の前歯が前に出るのは、上のあごが下のあごより成長し、前側に出るのが原因になります。
抜歯をするとスペースが生まれるため、全体的に歯を1本ずつ後方に動かせます。
すると、前に出ている歯も後方に下がり、きれいな歯並びになります。
前歯の突出感が強いと、抜歯が必要です。
重度の虫歯や歯周病がある
重度の虫歯や歯周病があると、インビザライン矯正をする前に抜歯をします。
矯正で歯を動かすと、抜けてしまう恐れがあるからです。
歯周病は、歯を支える骨や歯ぐきが溶けてしまい、抜けやすくなる症状です。
矯正の強い力で歯を動かそうとすると、抜けやすくなります。
また、症状を治さずに治療を進めると、悪化した際にインビザライン矯正を中止しないといけません。
重度の虫歯や歯周病があると、矯正をする前に抜歯をします。
抜歯をしないでインビザライン矯正ができる3つのケース
抜歯をしないでインビザライン矯正は可能です。
抜歯をするのは、歯を正しい位置に移動させるスペースをつくるためです。紹介する3つの方法で歯並びを改善できないと判断したときに、抜歯をします。
IPRで対応できる
IPRで対応できれば、抜歯をせずにインビザライン矯正ができます。
IPRとは、歯と歯の間をヤスリで削り隙間をつくることです。
別名「ディスキング」と呼ばれています。
歯の表面は、痛みから歯の内側を守る「エナメル質」でできています。
エナメル質の厚さは1.5〜2.0ミリあるため、隙間をつくるために削っても問題ありません。
ヤスリで削ってできた隙間を活用し、歯を動かし歯並びをきれいにできれば、抜歯は必要ないです。
歯並びを外側に広げる
歯並びを全体的に外側に広げ、歯と歯の隙間ができると、抜歯をしなくても良いです。
インビザライン矯正用のマウスピースを装着すると、歯を動かしたい方向に力を加えられます。
歯並びを外側に広げるように力を加えると、歯と歯の隙間が広がります。
そのため、歯を適切な位置に動かせるスペースができるため、きれいな歯並びに仕上がります。
歯並びを外側に広げて、矯正に必要なスペースができると、抜歯は必要ありません。
奥歯を後ろへ動かす
奥歯を後方に動かせると、抜歯をせずにインビザライン矯正ができます。
奥歯を動かすと、手前の歯との間にスペースが生まれるからです。
全体的に歯を後ろに動かせるため、歯並びがきれいになるように矯正できます。
ただし、奥歯の後ろに「親知らず」が生えていると、動かすさいの邪魔になるため抜歯が必要です。
奥歯を後ろに動かし、矯正に使用するスペースができれば、抜歯をしないでインビザライン矯正ができます。
抜歯が必要なケースで抜歯せずにインビザライン矯正をした場合
抜歯が必要なケースで、抜歯をせずにインビザライン矯正をすると、治療が失敗する場合があります。
そこで、抜歯をするかどうかは、精密検査やカウンセリングをもとに技術の確かな歯科矯正のドクターが判断する必要があります。
歯肉退縮
インビザライン矯正によって歯に力がかかるため、抜歯をしないと歯肉退縮(しにくたいしゅく)が起こる場合があります。
歯肉退縮とは、歯を支える「歯周組織」という歯ぐきが下がる症状です。つまり、本来歯茎に隠れている歯根が露出した状態のことをいいます。
歯肉退縮が悪化すると「虫歯」や痛んだりしみたりする「知覚過敏(ちかくかびん)」になりやすいです。
インビザライン矯正によって、歯肉退縮になる可能性があります。
矯正期間が伸びる
抜歯をしないと、インビザライン矯正期間が伸びることがあります。
たとえば、虫歯や歯周病がある場合です。
インビザライン矯正中に、虫歯や歯周病が悪化すると、矯正を一度中止しないといけません。
抜歯をせずに治療を進めると、矯正の完了が遅くなるケースがあります。
まとめ
インビザライン矯正で抜歯をするケースは、歯並びがとても悪い状態のときです。
歯並びの状態が軽度であれば、「IPR」や「歯並びを外側に広げる」などの方法で対応できます。
インビザライン矯正をする際に、抜歯をするかどうかは自分の判断ではわかりません。
矯正専門のドクターに、相談や精密検査をしてもらうことをおすすめします。
より詳しくは、赤坂さくら歯科クリニックにてご相談・ご来院をお待ちしております。